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岩沙好幸弁護士のOLかけこみ法律相談所/彼のものを勝手に捨てたら犯罪?
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岩沙好幸弁護士のOLかけこみ法律相談所/彼のものを勝手に捨てたら犯罪?

【20代の女性からご相談】

年上の彼の家で、同棲を始めることになりました。私の荷物を運び入れるため、彼の部屋を片づけていたところ、クローゼットの奥から元カノとのアルバムが出てきました。以前、長く付き合っていた人がいる、というのは聞いていたので、たぶんその人だと思います。
彼を問い詰めると、アルバムのほかにもアクセサリーや小物など、元カノからもらったものをそのまま使っているというのです。抗議しても、「モノに罪はない」と真剣に取り合ってくれません。元カノからのプレゼントが残っている部屋で一緒に住みたくないので、全部処分したいのですが、勝手に捨てたりするとマズいのでしょうか。

彼のものを勝手に捨てたら犯罪?

彼のものを勝手に捨てる行為は、器物損壊罪という犯罪行為にあたります。器物損壊罪の法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料ですので決して軽い罪ではありません。なお、同罪は親告罪といって、彼が告訴をしなければ公訴されることはありません。

アルバムはどうやって弁償するの?

彼から「弁償しろ」と請求された場合には、弁償しなければならない可能性があります。
彼との話し合いで、弁償する金額が決まれば、その金額で弁償することになります。もし、話し合いで解決できない場合には、裁判で解決することになりますが、賠償の額はものの客観的な価値によって決められます。アクセサリーなど客観的に価値を判断できるものとは異なり、アルバムに含まれる思い出の価値は客観的に判断することはできません。いかに思い出が詰まっていたとしても、アルバム自体に価値がなければ、彼は裁判上損害賠償を請求できないか、極めて低い賠償額しか得られないということになります。

夫婦間であれば、離婚事由になる?

もし仮に、これが夫婦間であった場合は、離婚事由になってしまうのでしょうか?
お互いが離婚に合意しているのであれば、役所に離婚届を出せば離婚はできますので、「ものを勝手に捨てた」ということが理由でも離婚をすることはできます。しかし、一方が離婚に応じないのであれば、調停や裁判で最終的に裁判所に判断してもらうことになります。
裁判で離婚できる場合については法律で定められていますが、今回の相談のように「夫が元カノからのプレゼントを捨てずに持っていたこと」や「妻が夫が持っていた元カノからのプレゼントを勝手に捨てたこと」が、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)があるといえるかが問題となります。これは、夫婦関係が破たんして回復の見込みがないときに認められます。
今言ったようなことが原因で夫婦ゲンカとなり仲が悪くなったとしても、一時的なことであり、今後の話し合いで仲直りできる可能性は十分にあると思いますので、それだけで、夫婦関係が破たんしたとまでは言えないでしょう。でも、きっかけはどうあれ、仲が悪くなり、長期間、別居が続いているような場合であれば、夫婦関係が回復できない程度にまで破綻してしまったとして、離婚が認められる可能性があります。
相談者さんのお気持ちはよくわかりますが、ご説明した通り、元カノからのプレゼントであっても、彼のものを勝手に処分してしまう行為は犯罪にあたりますので、してはいけません。
弁護士としては、今後もお二人がよい関係を続けていくために、相談者さんのお気持ちをしっかりと彼に伝えることが大切だと思います。不満を抱えたまま同棲を始めるのはよくないですので、同棲を始めるこのタイミングで、一度彼とお話し合いをされてみてはいかがでしょうか。

まとめ

●彼のものを勝手に捨てるのは...罪になる?
器物損壊罪という犯罪行為にあたり、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料です。なお、同罪は親告罪のため、彼が告訴をしなければ公訴されることはありません

●アルバムはどうやって弁償するの?
請求された場合には、弁償しなければならない可能性があります。話し合い、もしくは裁判で賠償額が決まります。賠償額は、ものに対する客観的な価値によって決められますが、アルバムに含まれる思い出の価値を客観的に判断することはできません。そのため、アルバム自体に価値がなければ、裁判上損害賠償を請求できないか、極めて低い賠償額しか得られないということになります

●夫婦間であれば、離婚事由になる?
今回の相談のように「夫が元カノからのプレゼントを捨てずに持っていたこと」や「妻が夫が持っていた元カノからのプレゼントを勝手に捨てたこと」が、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)があるといえるかが問題となります。たとえ、ものを捨てたことが原因で不仲になったとしても、話し合いで仲直りできる可能性は十分にあるため、それだけでは離婚事由とまでは言えませんが、きっかけはどうあれ、仲が悪くなり、長期間、別居が続くなど、夫婦関係が回復できない程度にまで破綻してしまった場合は、離婚が認められる可能性があります

●アディーレ法律事務所 岩沙 好幸(いわさ よしゆき)弁護士
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。
弁護士法人アディーレ法律事務所。
パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。
動物好きでフクロウを飼育中。
近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。

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